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無言のコミュニケーション

11227scot
 演奏会本番直前のゲネプロ、スコットランドの3楽章40小節目のアウフタクトで、思わぬことだったが、隣がほんのちょっと、と言うのは32分音符一個ぶん、早く弾いたのだ。「えっ?」と楽譜をあらためて見た。こういうところでこの人が間違えるはずがない。見ると、なんとここだけは16分音符じゃないか、今の今まで気づかなかった。すると隣の名人は、もちろん次の小節を弾く直前だったか、見透かしたようにうなずくのだ。「そう、さっきのはは32分音符じゃありませんよ」と。ゲネプロの最中のことなのだ。いくら名人だって、基本的に楽譜のほうを注視し続けなければ弾けやしない。僕のほうを覗いたふうはない。僕が、ほんの少し楽譜のほうを覗き込むのを、視線の70度か80度右脇で意識したんじゃなかろうか。僕の方だって、え?と思ったけど、今弾いているところを見失わないようにしながら、さっきのが16分音符だと改めて見つめ、そしたら視線の70度か80度左脇で隣がうなずくのが見えたのだ。誰一人気づかなかったに違いない。隣がうなずいたのを僕が意識したかどうかは、隣もわからなかったと思う。休憩時間になったときはもう忘れていたし、改めて言うようなほどのことでもない。本番ではもちろんきちんと弾いた。打ち上げに来てくれれば、もしかしたら、「あそこで、そうそう気づいた?とうなずいたでしょう?」と、こちらが気づいたことを言っていたかもしれないが、残念、本番が終わったらすぐ帰られたようだった。
 うれしい無言のコミュニケーションだった。僕には他に弾けないところがたくさんあった。そういえば後ろが最後まで(本番でも)間違えているらしいところもあって、ぼくはゲネプロで、なんだ自分が悪いんじゃない、惑わされてるだけだと気づいて、本番ではうまくいったところがあった。そこもぼくのこともけっして文句も言わず、自分はきちんと弾くのだ。
 打ち上げで少し話をしてみたい人だったなあ。

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